とき
2018年9月27日(木) 18:00開場 18:30開演
ところ
レクザムホール・小ホール
江戸茅町にある杉田屋の職人・幸太と庄吉は、どちらも腕も良く人柄もいい。研ぎ職人の源六の孫娘・おせんは、どちらにも近しさと親しさをもっていた。
だが、杉田屋の跡取りは幸太に決まり、失意の庄吉は上方へ修行に旅立つ。別れ際、「一人前になって帰るまで待っていてくれ」と、おせんに言い、「待っているわ・・・」と、咄嗟に答えたそのひと言が、おせんの運命を深く左右してゆく。
その後、杉田屋からおせんを幸太の嫁にほしいと言ってきたが、杉田屋との過去のいきさつから祖父の源六は断ってしまう。
間もなく源六が卒中で倒れる。そうしたある日、江戸は大火事に見舞われる。火の手は、おせんと源六の家にも迫ってきて・・・。
・山本周五郎さんがご自分の体験されたことをもとに作品を書かれたとのことで、舞台にもその様が良く表れていました。 今も昔も市井で暮らす者は、災害と貧困に人生を狂わされ、つらい生活の中に小さな幸せを見つける。この物語に登場するおせん・おもん・幸太・庄吉たちも、それぞれが普通のささやかな幸せを夢見ていたはず・・・。どの人生にも「自分ならどうしただろう」と深く考えさせられるものがある。
・「ひと言」の大切さをあらためて考えさせられた。人間のみが獲得した「言葉」。いっときの心の高ぶりから発したであろう「待っているわ」のひと言で、おせんは自らを縛ってしまった。言葉は人の心を、ほんのひと言で操ることができるということであろう。権二郎は、人のウワサみ尾ひれをつけて吹聴し、長屋の面々に手の平をかえしたように見下す。一方、朴訥な語りでじんわりと情けを感じる源六のひと言もある。 17才の心もとない純なおせんは、数々の苦難にみまわれながらも真実にたどり着く。おもんは何不自由ない暮らしからどん底の生活をしいられても、誇りは捨てず気持ちは明るく振る舞う。助けあう二人の姿になぜかジーンとさせられた。