雑誌編集者の仁美はある日突然、実家の母・邦子にスカイツリーの展望台に呼び出される。飼い犬の桃太郎が死んだと言うのだ。死や人生についてしみじみと語る邦子に、仁美は母の心境の変化を感じ取る。夏、家族や友人が久しぶりに顔を揃えた実家で、ひょんな諍いから邦子は夫・義男への積年の不満を爆発させ「あなたと同じお墓には入りたくない」と口走ってしまう。さらに海外在住の仁美の弟・義明が驚くべき告白をし一家は大騒動に。
そして邦子は地元のファミレスでやがて「墓友」となる個性豊かな老人たちと出会い…。
僕は見た目がおじいさんなので、たまに電車で小学生に席を譲られたりするのですが、実際は五十五歳。まだまだお墓の心配をする齢ではありません。でもその僕が「墓友」のことを知って興味を持った。最初は「合理的だな」と思ったんですね。結婚しない、子供を持たない、という人が増えている。「お一人さま」が集まって互助的な役割もしながら運営する墓友のお墓の在り方は実に腑に落ちます。それから「家の問題も大きいな」と思った。僕らはもはや「〇〇家の人」なんて意識は希薄で、個人の幸せを追っかけている。「〇〇家の墓」ではなく、気の合う仲間と住むシェアハウスのような「墓友のお墓」を選ぶ人が増えるのは自然なことかもしれない。
「墓友」には、いま僕らが直面するさまざまなドラマが含まれるように思いました。家、家族、コミュニティ、お一人さま、高齢化社会、人の絆、多様な価値観…今日のお芝居は、そうした大事でやっかいな問題を楽しく一緒に考えましょう、というスタンスで書きました。たくさん笑いながら、何か一つでもお持ち帰りいただけるものがあれば作者としてこんなに嬉しいことはありません。どうぞお楽しみください。
(劇団パンフレットより)
楽しいお芝居でした。傍観者の罪重いです。でもこれからの暮らしかたで変わると思っています。
鈴木聡さんの脚本、サイコーでした。最後の桜の前のシーン。いろいろな感情がつまっていてこちらもゆりうごかされました。
俳優座の芝居でこんなに笑ったのは初めて?最高に楽しく、ためになる芝居でした。台本を読んでから鑑賞でしたが、台本を超えて特にあの背景の絵がよかったですね。鈴木聡さんが俳優座の役者さんの新しい力を引き出しているように思えました。
<人の生死>をテーマにした重厚な話だった。でも、それをエネルギッシュに明るく観せてくれたので終始、楽しく、笑みを絶やさず観ていました。最後のシーンは一緒に拍手してしまいそうになり危なかったです。