2018年7月例会 「もし、終電に乗り遅れたら・・・」

俳優座劇場プロデュース

・とき

2018年7月16日(月・祝) 13:00開演

・ところ

レクザムホール・小ホール

アレクサンドル・ヴァムピーロフ

翻訳

宮澤俊一・五月女道子

演出

菊地准

キャスト

浅野雅博 / 小田伸泰 / 外山誠二 / 逢笠恵祐
岩崎正寛 / 若井なおみ / 藤本喜久子
舘田悠悠 / 槙乃萌美 / 里村孝雄

あらすじ

凍えそうな春の夜。ブスイギンとシーリワは都会の酒場で出会った娘たちと飲み明かそうと、郊外の町までやっては来たが、あっさり振られてしまう。最終電車はすでに出てしまい、なんとか泊めてもらおうと近くの家を片っ端からノックするが、けんもほろろに断られる二人。やっと入りかけた家でも青年に強盗とうたがわれ、シーリワはとっさに口走る、
「この男は君の兄貴なんだ!」
飛び入ったサラファーノフ家は、姉も弟も父親をひとり残して家を出ようと崩壊寸前。そして父にも秘密が…。その場しのぎの二人の言葉を真に受けて、事態はあらぬ方向へと走り出す!!

2013年の初演より再演を重ねた本作品がついに最終公演!『終電』に乗り遅れのないように。

劇評

朝日新聞名古屋版 2016年4月7日 桐山健一氏

夢のような物語にリアルなセリフと役の個性を弾ませる巧妙な演技で説得力を持ち込んだのが、俳優座劇場プロデュース公演「もし、終電に乗り遅れたら・・・」だ。生活感に根を下ろした登場人物には熱い血が通い、気の利いたユーモアも光った。   終電を逃した青年2人が宿を求めて見知らぬ家を訪ね、この家の生き別れた長男とその友人と名乗る。悪気のないうそが、仕事を偽る父親、婚約者に不満がある娘、失恋した息子の3人家族に波風を立て、事態はあらぬ方向へと走り出す。      軽やかな笑いの中で家族の愛憎や恋愛観の違い、人生の哀歓などを活写し、理想よりも現実の生活や愛情に生きる大切さを浮き彫りにしていく。お人よしの父親や心優しい偽息子、勝ち気な娘らんお思惑の絡み合いは、落語の人情話さながらの面白さだ。文学座、昴などの実力派俳優10人の座組みは秀逸。自身の役を楽々と、したたかに演じ、陰影の濃い人物を現出させた。                                                                        作者はロシア現代演劇を代表するA・ヴァムピーロフ。社会主義時代のソ連が舞台だが、現代の日本に置き換えても違和感のない大人の寓話である。相手を懐深く包み込む人情の機微が深遠なら、身近な人間関係の修復から広がる新たな世界への希望はさわやかだ。上質な舞台が生み出す感動とエネルギーには、時代も国境も越えた普遍性が息づいている。

観客アンケートより

 

【女性】

ウソがウソを連れてきて、ふくらんでいく。でも心の中に在る思いや伝えたい事は「真(まこと)」で、「家族の写真」もそうでしたが寒々しいロシアの世界だからこそ、温かい、しみじみとした人間関係が切実に求められ、観ている側もホーッと息をつけるのかもしれません。そして今や世界中が、温度だけでなく、心も凍てついているので、皆、しっっかりとしたがっているのかもしれませんね。

【男性(63)司法書士】

出だしは奇想で少なくとも日本ではありそうもない設定だと思うけれど、二人が入り込んでからの会話には含蓄の多いものがあり、秀逸な作品と考えます。両女優の対決(悪女ぶりとカレンさ)の妙、父親の悲哀、見所満載の舞台でした。絶好の配役と思います。ありがとう、お疲れ様。

【女性】

家族って何でしょうね。血の繋がりだけが家族ではないですね。涙が出ました。

【男性 会社員】

シーリワのひょろひょろさ加減、ブスイギンの生真面目さ、ニーナの清潔感、そしてどこまでもトボけた空気のまま流れていくSTORY。とても愉快、そして「その後」が楽しみな舞台でした‼ もう一回観に行きたいですね。

【男性(66)】

面白い芝居だろうとは思ってはいたけれど、これ程とは想像もしなかった。プトゥーシキナの「家族の写真」も傑作と思うけど、それに輪をかけた面白さ、シリーズ化して欲しい。

【女性】

ストーリーそのものは単純で、有り得ない様な流れなのに、自分も(ハラハラ、ドキドキしながら)一員になったつもりで、何とか誰も傷付かずに済みます様に・・・・・と思ってしまいます。ラスト、崩壊してしまうのか!?と心配ですが、真実をぶちまけて知った事で、却って結び付きが強くなっていくのは嬉しく、あ~、この場面の為に今までのストーリーは有ったのかと思います。うまくまとまっている作品ですよね。

【男性(51)会社員】

愛すべき素敵な登場人物を、素敵な役者さんたちが演じていました。追いつめられた人物のえがき方が、これぞコメディ、という感じで、ハラハラと楽しく観ていました。みなさん、おつかれさまでした。

【男性(62)教員】

あまりにも暖かい芝居、泣きながら笑い、笑いながら泣きました。ヴァムピーロフ万歳です。人生にはいろんな形があり、いろんなことがあります。でもどんな人生もすばらしいのです。人生をじっくり味わいながら、毎日を丁寧に生きていきたいと思います。

【女性(19)学生】

すばらしかったです! 話の内容もすごく面白みがあって、笑わせていただきました。そして何より役者のみなさんに驚きました。ありがとうございました。

【女性】

始めから引き込まれてとても楽しい時間が過ごせました。一緒に連れてきた小学生の娘もずっと笑っていて舞台っていいねと言っています。

【男性(71)】

プロデュース公演だからこその楽しみなのでしょう、俳優さんの所属劇団では思いもよらない味のある演技をみせてくれました。                                                         一寸考えられないようなきっかけ、2人の青年が突然たずねてきて(それも真夜中に)、その家の子供なのだと言い出す。父親も含めその嘘にのせられ、思わぬ方向に話は展開する。兄と称する男に妹への愛が芽ばえ、父の息子への愛へとも。しかし、そのドサクサの中から父親の家族をだました本人の立場の変化を生み、バラケそうな家族が元のサヤにおさまりそうな雰囲気になっていくのは、笑いの中から、ほほえましさを伝えてくれるコメディタッチで楽しみながら、暖かい気持ちにさせてくれました。