2016年11月例会『松井須磨子』

とき
2016年11月22日() 午後6時30分
2016年11月23日() 午後1時30分
ところ
レクザムホール 小ホール
構成・演出
加来 英治
ピアノ・音楽監督
城所 潔

イントロダクション

近代演劇史上に、一瞬の花を咲かせ、儚く散った、日本新劇最初の女優、松井須磨子。
芸術への深い愛、人生の機微を、独白の形で、物語は進行する。
『人形の家』の主人公のノラ、『復活』のヒロイン、カチューシャ等々、須磨子が演じた役の西洋の思想と、
須磨子自身の日本の魂が重なり、交錯し、新しい時代の息吹が生まれる。
栗原小巻演じる松井須磨子とピアニスト城所潔の演奏で、百年前の、幻の芸術座
(島村抱月と須磨子が設立した劇場)が、蜃気楼のように、はるかな霧の彼方に甦る。
須磨子は、結婚に破れ、自殺未遂という悲劇を乗り越え、生涯をささげる崇高な演劇と、
運命のひと、島村抱月に出会う。
二人は、力を合わせ、心を通わせ、新劇という困難な道を、歩みだす。
やがて、須磨子の芝居そして歌は、民衆に受け入れられ、その人生の絶頂期を迎える。
だが、須磨子の芸術人生は、抱月の死と共に、突然に終焉する。
「いのち短し、恋せよ乙女」須磨子の『ゴンドラの歌』が、聞こえ響く、永遠に。

日本初の新劇女優・松井須磨子の人生が、栗原小巻によって演じられるー

日本新劇の最初の女優 松井須磨子

 須磨子の人生と須磨子の演じた役を独白という形で物語は進行します。栗原小巻演じる松井須磨子とピアニスト城所潔の演奏で百年前の芸術座が蘇ります。
この作品は加来英治さん(栗原小巻さんの弟)が、新しく関越演鑑連に向けて書き下ろし、演出したものです。衣裳デザインは栗原小巻さんが担当しており衣裳も見どころです。

須磨子の苦悩

  須磨子は男性が演じていた女役を女性が演じるという新しいことに挑戦した。これは、当時の男尊女卑の社会ではたいへんな困難を伴った。
「女優の屈辱と誇」という文の中で次のように書いている。
「私は女優としての誇りよりも屈辱の方をより多く感じています。迫害せられています。自分の信ずるところに向かって進もうとすると、女のくせに生意気であるとか、女が言う意見に従うのは不見識だと言ってそれに反対する。」
男と女が共有して作る舞台。芸術という世界の中で須磨子は命懸けで取り組んでいった。

須磨子の理解者抱月

   須磨子の新しい挑戦と、芸術への一途な情熱は、周囲の人からわがままと誂られ軋轢を生むことが多かった。抱月は彼女の女優としての素質を高く評価し支えていった。
 「与えられた思想感情を純一なままに捧げ持って崩さず惑わずに進む力、情熱が俳優にとって重要な条件である。女優としての須磨子女史が有する最大の強みはこれだ。」また、「このような心理状態になれた人は常識の世界にはあまり歓迎せられないことが多い。芸術に深入りすればするほど世間を和し難い人になっていく、不幸な女性である」と書いている。