2017年1月例会『さくら色 オカンの嫁入り』

  • シーエイティプロデュース公演
  • とき
    2017年1月30日() 午後6時30分
    2017年1月31日() 午後1時30分
    ところ
    レクザムホール 大ホール
    原作
    咲乃月音「さくら色 オカンの嫁入り」(宝島社文庫)
    脚本
    赤澤ムック
    演出
    西川信廣

    イントロダクション

    ーある日、酔っ払ったオカンが若い男を
    拾ってきた。
    「今夜はね、お土産あんねん」
    「分かった分かった、明日いただきます」
    「あかん、ナマモノやから、あかん」

    …どちらさん?
    「オカンな、この人と、結婚しよう思うてんねん」
    ーえ?

     テカテカの、いかにも安ものの真っ赤なシャツに今どきリーゼント頭の捨て男(研二)を連れてきたオカン。強烈なその男の登場は、オカンと娘・月子、そしてオカンの過去を知る隣人・サク婆、愛犬・ハチへと波紋を広げ、4人と1匹の穏やかな日常を静かに変えていく。

    「捨て男って呼ばんといてな」
    「〝捨て男さん〟は板前さんなんですか」
    「どないしても月ちゃんは捨て男って呼びたいねんな」
    「どないしても月ちゃんって呼ばれたないんです」

    板前だった祖父・服部の血を引く研二の作る温かい料理。それはオカンと娘・月子をとりまく人々の心を徐々に溶かしていく。

    大阪の下町を舞台に、忘れかけた人情を、笑いと涙でお届けします。さくら色の春に!

    キャスト

    佐藤アツヒロ
    服部研二

    捨て男

    1987年光GENJIとしてデビュー。解散後はソロに転向。2000年、鴻上尚史作・演出にて初舞台を踏み、以後、現在に至るまで数々の話題作に出演。大劇場から小劇場、翻訳劇まで意欲的に活躍。

    熊谷真実
    陽子

    オカン

    1979年NHK朝の連続テレビ小説「マー姉ちゃん」の主役に抜擢され、同年製作者協会(エランドール賞)を受賞。

    正司花江
    陽子

    サク婆

    幼児より少女歌手の座長として全国を巡業。次女照江と漫才コンビを組む。1956年 長女歌江が加わり「かしまし娘」結成。

    荘田由紀
    月子

    文学座所属。劇団公演の他外部出演も多く、ストレートプレイからミュージカルまで巾広く活躍。9月例会「吾輩はウツである」にも出演。

    溝口琢矢
    ハチ

    飼い犬 雑種

    2007年に俳優デビュー。12歳で映画「劇場版 仮面ライダー電王 俺、誕生!」にてミニ電王を演じる。

    島田順司
    服部

    研二の祖父

    東京芸術座演劇研究所第1期生。1956年 司馬遼太郎原作「新選組血風録」の沖田総司役でデビュー。

    甘酸っぱい味

     この芝居の原作『オカンの嫁入り』は甘酸っぱい味のする小説である。
    その甘酸っぱさはどこから来るかと言えば、たぶん、人生において、私たちが繰り返すたくさんの出会いと
    別れがあるからだ。オカンとオトンの出会いと別れ。オカンと研二の出会い。サク婆、研二の祖父、舞台版には
    出てこないが先生と言った人々との出会いと別れである。そして、それらの出会いと別れを通して私たちは“家族”に
    ついて思いを巡らすことになる。もっと言えば、“運命”というものにだって思いを巡らすことになる。
     フランスの思想家・メンテーニュは「運命は我々を幸せにも不幸せにもしない。ただその材料をわれわれに提供
    するだけである」と言っている。このドラマに出てくる運命的な出会いと別れは幸せなのか? 不幸せなのか?
    そのあたりを考える時、なにか甘酸っぱいものを感じるのかも知れない。
     『さくら色 オカンの嫁入り』は出会いと別れのドラマであり、同時に月子という女性の成長の物語である。
    そして、サク婆や研二とその祖父との関わりを通して私たちは“家族”と言うものを考えさせられる物語である。
    舞台から小説とは少し違う甘酸っぱさを感じていただけたら、演出家としては幸せである。