2015年1月例会『をんな善哉』

とき
2015年1月23日() 午後6時30分
2015年1月24日() 午後1時
ところ
アルファあなぶきホール 小ホール
鈴木 聡
演出
宮田 慶子

「でもアタシまだ、女を終わりにしたくないの!」

恋に仕事に揺れ動く、甘味処「笹本」の女将・諒子。

東京の下町を舞台に繰り広げる人情喜劇!

上演時間
2時間20分 (2幕)

ものがたり

時は現代。

舞台は東京の下町。戦前から続く老舗の甘味処「笹本」。

女将・諒子は、かつて広告代理店に勤めるキャリアウーマンだった。時代はバブル景気の真っ只中。男と肩を並べてバリバリ仕事をこなし、恋も遊びも贅沢に楽しんだ。「いつまでも自由を楽しんでいたい」そう思っていた。40を目前にした頃、両親が相次いで亡くなった。

ようやく立ち止った諒子。

気がつけば、恋の相手は皆結婚していた。バブルも終わり、毎日がお祭りのようだった時代は過ぎ去った。諒子は退職し、両親が残した店を継ぐ決心をした。

それから数十年。

この小さな町での暮らしは派手ではないが、穏やかで楽しい。しかし、諒子のなかには、ある思いがくすぶり続けていた。「あたしまだ、女を終わりにしたくない」。そんなある日、かつての恋人が偶然、客として「笹本」を訪れる。再びの恋の予感。そして新たな仕事への誘い。「もう一度輝けるのかもしれない」そんな折、人々の思いが詰まった商店街を揺るがす危機が訪れる。

キャスト

笹本諒子
高畑淳子

甘味処「笹本」の女将。

前田繁男
名取幸政

「笹本」の菓子職人。

石原国男
平尾仁

「石原酒店」店主。

石原光代
津田真澄

国男の妻。

石原直美
小暮智美

国男と光代の娘。

岡本瞬
豊田茂

直美の恋人。自称、フィギュアアーチスト。

塚田浩司
綱島郷太郎

「ドルフィンBAR」のマスター。

谷川澄江
増子倭文江

会社員時代の諒子の同期。大手広告代理店執行役員。

朝倉陽一
佐藤祐四

澄江の恋人。都市開発会社社長。

田村直樹
手塚秀彰

諒子のかつての恋人。大手広告代理店社員。

「をんなに感謝」

女の人にはかなわない、と思うことがあります。自分の直感を疑わない、というか、男が論理的に説得しようとしても動かない。男が理屈を駆使して「だからこれでいいじゃないか」と言っても「いや。いやなものはいや」。女の人は全員が、世界の中心は自分だ、と思っているのではないか、と思うことすらあります。

女性の論理性の欠如や、会話における話題の飛び方、好き嫌いの強さ、などは、女性について男がぼやく際の定番ネタではありますが、これらはすべて「だから女性は信頼できる」ということにもつながると思うのですね。すなわち、本音で喋る、経緯にとらわれず自由に発想できる、世間の都合より自分の身体感覚を優先する…などなど。女性と話していて、少々、くたびれるなあと思いつつも、いつも勉強になるのはそのことです。

さて、『をんな善哉』では、両親が亡くなったためやむなく老舗甘味処の女将となった主人公・諒子と、結婚もせず仕事一筋に頑張って会社の役員にまで出世した親友・澄江が、ポンポン本音で会話する場面が何度も描かれます。そこには昼間するには多少はばかられる話題もあったり、ずいぶんとドライな言葉もあったり。そのやりとりの中で、女性の強さや弱さ、ユーモアやエネルギーをいきいきと(「あっぱれ!」と思うことも「おいおいそこまで言っちゃうの?」ということも含めて)描きたい、というのが作者である僕の狙いでもあります。

諒子は52歳、そろそろ女も終わりかしら、という悩みがあります。親のために店を継いでしまったけど、ほんとにそれでよかったかしら、という思いもあります。住む町を愛しく思いつつも、この小さな町が自分の世界のすべてであっていいのかしら、という迷いもあります。その間で右往左往し、あたふたと惑う諒子の姿に、お客様一人一人がいくらかでも自分を重ね合わせ、身の回りのことや未来のことに思いを馳せていただければ、作者としてこんなに嬉しいことはありません。

主人公を演じてくださる高畑淳子さん、その親友役を演じてくださる増子倭文江さん、そして演出の宮田慶子さん、女性たちの力強さにあおられ励まされ、脚本を書かせていただきました。作者としては、女性に感謝! の思いでいっぱいです。

どうぞ皆さま、お楽しみくださいますように。

観客席より

高畑さんの演技が抜群! 幕開けから自然に笑いの世界にひきこまれた。女性の心の揺れがよく表現できていた。楽しい一時を感謝したい。前の席だったので、線香花火と匂いまでも近くで感じられ、役者さんの表情も良く見え、良かった。

笑わせて頂きました。楽しかったです。繁(しげ)さん渋いですね。善哉の甘さが、ぐーうと引き出されましたよ。一寸ほめ過ぎかな? 舞台にぎやかに、とても、よかったよ。

本当の幸せとか、能力を生かすこととか、色んなことを考えさせられました。とても楽しく、とても深くて、とても温かいお芝居でした。

高畑さん、やはり素敵! 声が皆さん通って、とても聞きやすかった。セットも雰囲気が良くて、町の人たちの愛が伝わってきた。とても良かったです。

同じ年代で、色々自分の人生と、重ねてみました。脳の中の幸せ、たくさん作ります。これからの人生の中で…。高畑さんと同い年、元気もらいました。

いい芝居だった。高畑さんの演技は勿論だったが、他の九人の役者さん、一人ひとりがとてもよかった。久々に良い芝居を観せていただいたという思いが強くした。