「でもアタシまだ、女を終わりにしたくないの!」
恋に仕事に揺れ動く、甘味処「笹本」の女将・諒子。
東京の下町を舞台に繰り広げる人情喜劇!
時は現代。
舞台は東京の下町。戦前から続く老舗の甘味処「笹本」。
女将・諒子は、かつて広告代理店に勤めるキャリアウーマンだった。時代はバブル景気の真っ只中。男と肩を並べてバリバリ仕事をこなし、恋も遊びも贅沢に楽しんだ。「いつまでも自由を楽しんでいたい」そう思っていた。40を目前にした頃、両親が相次いで亡くなった。
ようやく立ち止った諒子。
気がつけば、恋の相手は皆結婚していた。バブルも終わり、毎日がお祭りのようだった時代は過ぎ去った。諒子は退職し、両親が残した店を継ぐ決心をした。
それから数十年。
この小さな町での暮らしは派手ではないが、穏やかで楽しい。しかし、諒子のなかには、ある思いがくすぶり続けていた。「あたしまだ、女を終わりにしたくない」。そんなある日、かつての恋人が偶然、客として「笹本」を訪れる。再びの恋の予感。そして新たな仕事への誘い。「もう一度輝けるのかもしれない」そんな折、人々の思いが詰まった商店街を揺るがす危機が訪れる。
甘味処「笹本」の女将。
「笹本」の菓子職人。
「石原酒店」店主。
国男の妻。
国男と光代の娘。
直美の恋人。自称、フィギュアアーチスト。
「ドルフィンBAR」のマスター。
会社員時代の諒子の同期。大手広告代理店執行役員。
澄江の恋人。都市開発会社社長。
諒子のかつての恋人。大手広告代理店社員。
女の人にはかなわない、と思うことがあります。自分の直感を疑わない、というか、男が論理的に説得しようとしても動かない。男が理屈を駆使して「だからこれでいいじゃないか」と言っても「いや。いやなものはいや」。女の人は全員が、世界の中心は自分だ、と思っているのではないか、と思うことすらあります。
女性の論理性の欠如や、会話における話題の飛び方、好き嫌いの強さ、などは、女性について男がぼやく際の定番ネタではありますが、これらはすべて「だから女性は信頼できる」ということにもつながると思うのですね。すなわち、本音で喋る、経緯にとらわれず自由に発想できる、世間の都合より自分の身体感覚を優先する…などなど。女性と話していて、少々、くたびれるなあと思いつつも、いつも勉強になるのはそのことです。
さて、『をんな善哉』では、両親が亡くなったためやむなく老舗甘味処の女将となった主人公・諒子と、結婚もせず仕事一筋に頑張って会社の役員にまで出世した親友・澄江が、ポンポン本音で会話する場面が何度も描かれます。そこには昼間するには多少はばかられる話題もあったり、ずいぶんとドライな言葉もあったり。そのやりとりの中で、女性の強さや弱さ、ユーモアやエネルギーをいきいきと(「あっぱれ!」と思うことも「おいおいそこまで言っちゃうの?」ということも含めて)描きたい、というのが作者である僕の狙いでもあります。
諒子は52歳、そろそろ女も終わりかしら、という悩みがあります。親のために店を継いでしまったけど、ほんとにそれでよかったかしら、という思いもあります。住む町を愛しく思いつつも、この小さな町が自分の世界のすべてであっていいのかしら、という迷いもあります。その間で右往左往し、あたふたと惑う諒子の姿に、お客様一人一人がいくらかでも自分を重ね合わせ、身の回りのことや未来のことに思いを馳せていただければ、作者としてこんなに嬉しいことはありません。
主人公を演じてくださる高畑淳子さん、その親友役を演じてくださる増子倭文江さん、そして演出の宮田慶子さん、女性たちの力強さにあおられ励まされ、脚本を書かせていただきました。作者としては、女性に感謝! の思いでいっぱいです。
どうぞ皆さま、お楽しみくださいますように。
高畑さんの演技が抜群! 幕開けから自然に笑いの世界にひきこまれた。女性の心の揺れがよく表現できていた。楽しい一時を感謝したい。前の席だったので、線香花火と匂いまでも近くで感じられ、役者さんの表情も良く見え、良かった。
笑わせて頂きました。楽しかったです。繁(しげ)さん渋いですね。善哉の甘さが、ぐーうと引き出されましたよ。一寸ほめ過ぎかな? 舞台にぎやかに、とても、よかったよ。
本当の幸せとか、能力を生かすこととか、色んなことを考えさせられました。とても楽しく、とても深くて、とても温かいお芝居でした。
高畑さん、やはり素敵! 声が皆さん通って、とても聞きやすかった。セットも雰囲気が良くて、町の人たちの愛が伝わってきた。とても良かったです。
同じ年代で、色々自分の人生と、重ねてみました。脳の中の幸せ、たくさん作ります。これからの人生の中で…。高畑さんと同い年、元気もらいました。
いい芝居だった。高畑さんの演技は勿論だったが、他の九人の役者さん、一人ひとりがとてもよかった。久々に良い芝居を観せていただいたという思いが強くした。